今回発表する技術は、セルロース(注2)の分解物であるセロビオースに、5種類の酵素(セロビオースホスホリラーゼ、グルカンホスホリラーゼ、ムタロターゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ)を同時に作用させることにより、高い変換効率でセロビオースからアミロースの製造が可能となりました。この方法により、セロビオース100gから、約35gの酵素合成アミロースを生産することができます。
具体的には、以下のような反応が起こります。最初にセロビオースホスホリラーゼがセロビオースに作用してグルコース-1-リン酸と呼ばれる中間体を生じます。次にその中間体にグルカンホスホリラーゼが作用して、純粋なアミロースが生産されます。反応中に、ムタロターゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを同時に作用させることにより、更にアミロースの収率が飛躍的に上昇します。それぞれの酵素は、これまで研究レベルではよく知られた酵素でしたが、このように組み合わせて使用されることはありませんでした。
近年、石油資源の枯渇が心配される中、再生産可能なバイオマス(注3)資源であるセルロースの利用技術開発が世界中で進められています。しかし、その多くは、セルロースをエタノールへと変換してガソリン代替用のエネルギーとすることを目的としています。今回の技術のように、セルロースを食糧資源として利用する試みはありません。本技術は、迫りくる食糧危機を回避するための非常に重要な技術であると考えます。
さらに、酵素合成アミロースは、優れた生分解性と高度な機能を併せ持つ新規材料であり、液晶テレビなどの偏光フィルムや、医療用材料など、さまざまな産業に利用が可能です。江崎グリコと三和澱粉工業は、砂糖を原料として酵素合成アミロースを製造し、販売する計画です。今回の技術開発により、地球環境の変動や食糧需給バランスにより、砂糖の入手が困難となった場合には、原料をセルロースに切り替えることが可能となりました。
本研究成果は、本年3月28日より札幌で開催されます日本農芸化学会2005年度大会にて発表予定です。また、本年4月3日からスペイン バルセロナで開催される第6回Carbohydrate Bioengineering Meeting、6月にフランスで開催される第4回European Symposium on Enzymes in Grain Processing、6月に香港で開催されるGordon Research Conferenceなどの国際会議に於いて発表いたします。